日本の成人のうち、約5人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍といわれています。糖尿病は重症化するとさまざまな合併症を引き起こします。普段の生活からバランスの良い食事、適度な運動など、未病改善する取組を心がけましょう。

糖尿病とは

糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。

血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気(糖尿病の慢性合併症)につながります。また、著しく高い血糖は、それだけで昏睡(こんすい)などをおこすことがあります(糖尿病の急性合併症)。

 

血糖とインスリンについて

私たちが食事をすると、栄養素の一部は糖となって腸から吸収されます。寝ている間など、食事をしない時間が続くときには、主に肝臓により糖が作られています。糖はからだにとって大切であり、食事をしたときも、食べていないときも、常に血液中を流れています。糖は血液の流れに乗って、からだのあらゆる臓器や組織へめぐります。

血液中をただよい、筋肉などの細胞までたどり着いた糖は、同じく血液中に流れていたインスリンの助けを借りて細胞に取り込まれます。取り込まれた糖は、私たちのからだが活動するためのエネルギーの源となります。

インスリンは細胞のドアを開ける鍵のような役割を果たしています。インスリンの働きによって、細胞の前まで到着した糖はすみやかに細胞の中に入り、糖は血液中にあふれることなく、血液中の糖の濃度は一定の範囲におさまっています。

糖はからだのエネルギー源です。糖をエネルギーとして使うにはインスリン(鍵)が必要となります。

 

「インスリンが十分に働かない」ってどういうこと?

糖尿病になるとインスリンが十分に働かず、血糖をうまく細胞に取り込めなくなるため、血液中に糖があふれてしまいます。これには、2つの原因があります。

インスリン分泌低下:膵臓の機能の低下により、十分なインスリンを作れなくなってしまう状態。細胞のドアを開けるための鍵が不足しているので、糖が中に入れず、血液中にあふれてしまいます。
インスリン抵抗性:インスリンは十分な量が作られているけれども、効果を発揮できない状態。運動不足や食べ過ぎが原因で肥満になると、インスリンが働きにくくなります。鍵であるインスリンがたくさんあっても、細胞のドアのたてつけが悪く、開けることができません。この場合も、血液中に糖があふれてしまいます。
糖尿病ではこの2つが影響して、血糖値が高くなってしまいます。

 

糖尿病の症状ってどんなもの?

 

症状がなく糖尿病になっていることに気がついていない方も多くいます。糖尿病では、かなり血糖値が高くなければ症状が現れません。
高血糖における症状は、喉が渇く・水をよく飲む、尿の回数が増える、体重が減る、疲れやすくなるなどです。

さらに血糖値が高くなると、意識障害に至ることもあります。
症状がまったくないまま健診などで糖尿病が判明する方もいれば、急に高血糖の症状が現れて糖尿病が判明する方もいます。また、眼や腎臓の合併症の症状が現れて、初めて糖尿病と診断される方もいます。

 

糖尿病ってどんな種類があるの?

糖尿病は、その成りたちによっていくつかの種類に分類されますが、大きく分けると「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「その他の特定の機序、疾患によるもの」、そして「妊娠糖尿病」があります。

1型糖尿病

1型糖尿病では、膵臓からインスリンがほとんど出なくなる(インスリン分泌低下)ことにより血糖値が高くなります。生きていくために、注射でインスリンを補う治療が必須となります。この状態を、インスリン依存状態といいます。

2型糖尿病

2型糖尿病は、インスリンが出にくくなったり(インスリン分泌低下)、インスリンが効きにくくなったり(インスリン抵抗性)することによって血糖値が高くなります。2型糖尿病となる原因は、遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があるといわれています。
すべての2型糖尿病患者の方に生活習慣の問題があるわけではありませんが、血糖値を望ましい範囲にコントロールするためには、食事や運動習慣の見直しがとても重要です。飲み薬や注射なども必要に応じて利用します。

その他の特定の機序、疾患によるもの

糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇し、糖尿病を発症することがあります。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めてわかった、まだ糖尿病には至っていない血糖の上昇をいいます。

糖は赤ちゃんの栄養となるので、多すぎても少なすぎても成長に影響を及ぼすことがあります。そのため、お腹の赤ちゃんに十分な栄養を与えながら、細やかな血糖管理をすることが大切です。
妊娠中は絶えず赤ちゃんに栄養を与えているため、お腹が空いているときの血糖値は、妊娠していないときと比べて低くなります。
一方で、胎盤からでるホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、食後の血糖値は上がりやすくなります。
多くの場合、高い血糖値は出産のあとに戻りますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来糖尿病になりやすいといわれています。

糖尿病を予防しよう

適正体重を維持しましょう

肥満は、万病のもとです。肥満はインスリンの働きを低下させ、肥満でない人より5倍も糖尿病を発症しやすいといわれています。統計的にもっとも病気にかかりにくいのはBMI22とされています。

※BMIとは…[体重(kg)]÷[身長(m)]÷[身長(m)]で算出できます。肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数です。

運動習慣を身につけましょう

血糖値が高めで、肥満の人は、健康的な食事と運動習慣を身につけることで糖尿病の発症率は、半分以下になるといわれています。
また、血糖値を下げる薬を予防的に飲むよりも運動を続けたほうが効果的といわれています。

運動の効果としては、
 1.筋肉でブドウ糖や脂肪の利用が増加し、食後の血糖上昇が改善される。
 2.インスリンの働きがよくなって、血糖コントロールがよくなる。
 3.血液中の中性脂肪が少なくなり、HDL(善玉)コレステロールが多くなる。
 4.血圧が高い人では、血圧が下がる。

健康的な食習慣

 1.野菜はたっぷり食べよう
  低エネルギーでビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富なので、肥満防止につながります。

 2.食事は規則正しく、時間をかけて食べよう
  朝食を抜いたり、食事時間が不規則だったり、寝る前3時間の間に食べるのはよくありません。

 3.ゆっくりよく噛んで食べることで、食べ過ぎを防ぐことができます。
  甘いものや油っぽいものは食べ過ぎない
  太りやすい食品なので、食べ過ぎに気をつけましょう。

 4.ひとり分ずつ、取り分けて食べよう
  大勢で大皿から食べると、どのくらい食べたかわかりづらいため、たくさん食べてしまいがちです。

 5.薄味にしよう
  濃い味のおかずは、ごはんをたくさん食べてしまいがちです。

 6.ながら食いはやめよう
 テレビを見ながら、新聞を読みながらといったながら食いも、食べた量がわかりづらいものです。よく味わえないため、満足感もありません。

 7.GI値の低い食品を選びましょう
  食後に血糖値を上げる度合いやスピードは食品によって異なり、それを数字で表したものを「GI値」(グリセミック・インデックス、血糖上昇指数)といいます。同じカロリー、同じ糖質量でもGI値が高い食品ほど食後血糖値が上がりやすく、GI値の低い食品ほど食後血糖値が上がりにくいといわれています。
調理方法、食べ方、組み合わせ等によって食後血糖値の上がり方は異なりますが、主食では白米より玄米の方がGI値は低く、野菜、きのこ、海藻類は比較的GI値の低い食品です。また、ゆっくりよく噛んで食べたり食物繊維を多く摂ると、血糖値の上昇がゆるやかになります。食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、血糖値の上昇をゆるやかにする作用があるのは水溶性食物繊維であり、ごぼうや納豆、切干大根などに多く含まれています。

歯と口腔の健康に気をつけましょう

 糖尿病の人は、免疫力が低下し、歯ぐきの炎症が起こりやすくなり、歯周病が発症・進行する可能性があります。
糖尿病の人、またその予備群の人は、歯周病の発症、重症化予防のため、しっかり歯みがきすることが大切です。